Pronunciation
th(/θ/ /ð/)の出し方と、優先順位が低い理由
think が sink に聞こえても、たいていは通じます。th は日本語話者にとって目立つ音ですが、単語の区別にはあまり効いておらず、通じなさへの影響は小さいことが分かっています。出し方は簡単な部類なので、直すこと自体は難しくありません。
最終更新
think が sink、they が day に聞こえる。日本語に対応する音がないので、s や z、t や d で代用してしまいます。日本人が英語の発音でまず気にする音は、たいていこれです。
ただ、優先順位としては低いほうです。ここは正直に書きます。
目立つのに、優先度が低い理由
音の誤りの重さは、その対立が単語の区別にどれだけ使われているかで変わります。これを機能負荷と呼びます。/l/ と /r/ の取り違えは right が light になって意味が壊れますが、/θ/ を /s/ で言っても、意味が変わる場面は多くありません。
実験でも、機能負荷の高い誤りは理解度を下げ、低い誤りはほとんど影響しませんでした(Munro & Derwing 2006)。日本人171名を対象にした再現でも同じ結果が出ています(O’Neal & Latham 2023)。
つまり、練習時間が限られているなら、/r/ と /l/ や /v/ と /b/ を先に片づけたほうが、通じるようになるまでの距離が短い。th は後回しでかまいません。
念のため書いておくと、これは「一生直さなくていい」という意味ではありません。順番の話です。
出し方
舌先を上下の歯のあいだに軽く挟むか、上の前歯の裏側に近づけます。そこから息を出します。噛む必要はありません。強く噛むと息が止まって、音が続かなくなります。
最初は大げさなくらい舌を出してかまいません。慣れてきたら、舌先が歯に触れるかどうかという程度まで小さくしていきます。ネイティブの実際の発話でも、舌はそれほど大きく動いていません。
/θ/ と /ð/ の違いは、声を鳴らすかどうかだけです。think は息だけ、this は声を鳴らします。喉に手を当てて、震えていれば /ð/ です。
- /θ/(息だけ): think, thank, three, math, both
- /ð/(声を鳴らす): this, that, they, there, mother, breathe
実は the の言い方の問題
/ð/ が出てくる語を眺めると、the, this, that, they, there と、超高頻度の機能語ばかりです。つまり th を直すというより、the の言い方を直すほうが実際の効果は大きい。
そして機能語は、はっきり発音する語ではありません。文の中では弱く短く流れます。the を1語ずつ丁寧に「ザ」と言うより、前後の語とつなげて軽く流すほうが、英語のリズムに近づきます。ここは音単体の練習ではなく、文をまるごと真似るシャドーイングの領分です。
自分の音を確かめる
think と sink を続けて録音して、聞き比べてください。同じに聞こえるなら、舌が歯のあいだに来ていません。
ひとつ注意があります。自動採点は、単語をはっきり読む場面では信頼できますが、崩れた発話や弱形では誤判定が出やすい。the のような機能語の点数は、あまり真に受けないでください。練習は単語から始めるのが安全です。
よくある質問
- th を直さないと通じませんか
- たいていは通じます。/θ/ を /s/ で言っても、単語の区別に使われている場面が少ないので、文脈で回復されます。ただし通じることと、聞き返されないことは別です。気になるなら直せばいいですし、直すのは難しくありません。
- 舌を噛むのですか
- 噛みません。上下の歯のあいだに舌先を軽く挟むか、上の前歯の裏に近づけるだけです。強く噛むと音が止まって続かなくなります。
- /θ/ と /ð/ の違いは何ですか
- 口の形は同じで、声を鳴らすかどうかだけが違います。think の th は息だけ(/θ/)、this の th は声を鳴らします(/ð/)。喉に手を当てると分かります。
- 早口だと th が言えません
- the や that のような機能語は、ネイティブも舌を軽くしか動かしていません。丁寧に発音しようとするほど遅れるので、弱く速く流すほうが実際の英語に近づきます。
参考文献
- Munro, M. J., & Derwing, T. M. (2006). The functional load principle in ESL pronunciation instruction: An exploratory study. System, 34(4).
- O’Neal, G., & Latham, M. (2023). The Functional Load Principle and Intelligibility: A replication with Japanese listeners. Chinese Journal of Applied Linguistics, 46(1).
- Levis, J. (2005). Changing Contexts and Shifting Paradigms in Pronunciation Teaching. TESOL Quarterly, 39(3).
出典の全体像は日本人が苦手な英語の音と、直す順番にまとめています。